【書評】60歳からの「筋活」〜 一生歩ける・動ける体のつくり方 〜
今回は「60歳からの筋活」という本をご紹介します。
タイトルにある「筋活」とは、
きちんとしたエビデンス(科学的な根拠)のもと、筋トレ+有酸素運動に加え、ストレッチや食事など生活習慣の工夫も含めて筋肉を「維持」、あるいは「強化」する活動のことです。
本書では、元気で一生歩ける体、動ける体を作るために、この筋活の必要性や筋トレの方法がわかりやすく具体的に紹介されています。
このコラムでは、僕自身が読んで面白かったところや実際の筋トレ方法などをご紹介したいと思います。
<著者紹介>
久野譜也(くのしんや)先生
筑波大学大学院人間総合科学研究科教授。
医学博士。
つくばウエルネスリサーチ代表。
スポーツ医学の分野において、中高年の筋力運動、サルコペニア肥満、健康政策などを研究。
<こんな方におすすめ>
本書は、
・50代、60代以上で、最近疲れやすくなった
・いくつになっても自分の足で歩きたい
・一生動ける体をつくる筋トレ法を知りたい
といった方にオススメします。
<面白かったところ>
40歳以降、毎年1%ずつ筋肉は減っていく
「最近、疲れやすくなった」
「体力が落ちた」
そう感じられることはありませんか?
久野先生の研究室の研究によると、人間の体は30代をピークに、40歳以降、毎年1%ずつ筋肉が減少するとのこと。
これは10年単位で10%になり、70代になると20代の半分の量しか筋肉がなくなってしまう、ということ。
このように、加齢とともに筋肉量が減少することを「サルコペニア」といいます。
※ラテン語で筋肉を意味する〝サルコ〟と、消失を意味する〝ぺニア〟を合わせた造語です。
サルコペニアは、いまや40歳以上の約4分の1、80歳を超えると半数の人に見られると言われています。
そして、筋肉量が一定基準を下回り、BMI(体格指数)が25以上の肥満になること、つまり筋肉量が少なく、太った状態をサルコペニア肥満と言います。
40代以降の男女6000人を対象に行ったサルコペニア肥満の調査では、男女とも60代で増え始め、70代以降ではサルコペニア肥満の方が約3割に達するという結果に。
高齢者の方がこのサルコペニア肥満になると転倒や骨折をしやすくなり、単純な肥満の方より高血圧や糖尿病のリスクが高くなります。
それでは、サルコペニア肥満を予防し、健康長寿を目指すために、どうしたらいいのでしょうか?
久野先生は、60歳からの筋活として、
・筋トレでピンク筋を増やす
・ウォーキングなどの有酸素運動を行う
・食事を工夫する
という3つのセットを主に推奨しています。
久野先生自身がメタボになりかけた経験がありましたが、この3つの組み合わせで筋肉が若返り、現在もベスト体重をキープしているとのこと。
健康長寿のためのスーパー筋肉「ピンク筋」とは?
僕たちの体の筋肉を構成している筋線維は2種類あって、それぞれ「速筋」「遅筋」と呼ばれています。
速筋は白っぽい色をしているので「白筋」とも呼ばれ、主に糖分をエネルギー源として瞬発的な力を発揮する筋肉のこと。敵が来た時に素早く動くヒラメのような白身魚に速筋が多いと言われています。
遅筋は赤っぽい色のため「赤筋」とも呼ばれ、持久力に優れ、脂肪を燃焼しやすいことが特長で、マグロのような回遊魚は遅筋が多いと言われています。
そして、この瞬発力に優れた速筋(白筋)と、持久力に優れた遅筋(赤筋)のいいとこ取りをしたのが、中間筋である「ピンク筋」です。
ピンク筋は、生まれつきその割合が決まっていますが、トレーニングをすることで速筋の一部をピンク筋に変えることが可能とのこと!
そこで今回、下半身の筋肉が衰えやすい中高年の方にオススメしたい、このピンク筋を増やすために最適な筋トレ法を2つご紹介します。
<ピンク筋を鍛える方法>
その1・相撲スクワット
※引用:60歳からの筋活より
その2・まき割スクワット
※引用:60歳からの筋活より
<まとめ>
「筋トレ」と「有酸素運動」のセットが健康長寿の秘訣
「(遅筋を主に使う)ウォーキングだけでは速筋の筋肉量の減少を防ぐことはできない」
と久野先生が言われているように、健康長寿を実現するためには、速筋を鍛える「筋トレ」と遅筋を使う「(ウォーキングなどの)有酸素運動」の両方を並行して行うことが重要です。
今回ご紹介したピンク筋のトレーニングは、この両方をいいとこ取りしたものになりますが、それ以外にも、中高年以上の方が効率よく下半身の速筋を鍛えられる筋トレの方法をはじめ、ウォーキングや食事のポイントなどもわかりやすく紹介されていますので、ご興味がおありの方はぜひ本書をご一読くださいね。
<さいごに>
100歳の双子姉妹として国民的人気となった、きんさんぎんさん。
※きんさんの画像(1998年12月、成田きんさん(右)と蟹江ぎんさん(左)引用:産経新聞より
成田きんさんは、100歳を過ぎてから筋トレを始め、ついに杖なしでも歩けるようになったそうです。
筋トレもウォーキングも、何歳から始めても遅くはありません。使えば筋肉はちゃんと応えてくれます。
あなたにも、その事実を知っていただきたくて、本書を紹介させていただきました。
ということで、今回の話は以上です。
関連記事
-
【書評】習慣の力 〜 朝散歩を習慣にする鉄則 〜
今回は、「習慣の力」という全米でベストセラーになった1冊をご紹介します。
-
【書評】『LIFE SPAN(ライフスパン)』〜 人類は150歳まで生きることができる!? 〜
今回は、老化の原因と若返りの方法に関する研究で世界的に有名な科学者のデビッド・A・シンクレア氏によって書かれた科学書『LIFE SPAN(ライフスパン)』をご紹介します。
-
【書評】ウォーキング・セラピーとは? 〜ストレス・不安・うつは「歩くこと」と「◯◯こと」が効果的!〜
今回は「ウォーキング・セラピー」という本をご紹介させていただきます。著者は、自身のうつ病と依存症をウォーキングによって克服した経験から「ウォーキングセラピー」を提唱した臨床心理士です。
-
【書評】病気の9割は歩くだけで治る!~ 歩くことは、どう身体にいいのか? ~
「病気の9割は歩くことで治る!」という本をご紹介させていただきます。
-
【5分解説】歩くことで免疫力アップ!〜 骨ホルモンの話 〜
今回は「病気の9割は歩くだけで治るpart2」という本の中から、「骨から長寿ホルモンが出ていた!」というところの話を解説いたします。