【書評】NATURE FIX ~ 自然が最高の脳をつくる ~
今回は「NATURE FIX ~ 自然が最高の脳をつくる ~」という本をご紹介させていただきます。
本書は、ワシントンに住む著者が世界中を駆け巡り、自然を利用したプログラムの実施者や研究者に会いにいき、「自然が人間の脳や身体にどのような影響を与えるのか」ということを科学的に実証しようと試みた1冊です。
<著者の紹介>
著者のフローレンス・ウィリアムズさんは、ジャーナリストで2人の子どもを育てる母親でもあります。
最近はワシントンD.C.を拠点に活動していて、特に都市で暮らす人々と自然とを結びつけることに最も情熱を注いでいるそうです。
『アウトサイド・マガジン』の編集に携わるかたわら、『ニューヨーク・タイムズ』『ニューヨーク・タイムズ・マガジン』『ナショナルジオグラフィック』などに環境、健康、科学をテーマとした記事を執筆しています。
<こんな方にオススメします>
本書は、
・ストレスの多い生活をしている
・心身に不調をきたしている
・自然が脳や体に与える影響について知りたい
といった方々にオススメします。
それなりにボリュームがありますが、気になったところだけを飛ばし読みするだけでも、読んでよかったと思える1冊です。
<面白かったところ>
それでは、面白かったところをざっとご紹介しますね。
・バイオフィリア仮説
ハーバード大学の昆虫学者エドワード・ウィルソン氏は、バイオフィリアを「人間が他の生きた有機体と情緒の面で生まれつき密接な関係をもっていること」と定義し、人類はただ生き延びることだけを目的として進化的に適応してきたのではなく、もっと深い充足感を求めていると考えました。
例えば、iPhoneで有名なアップル社がリンゴのマークを採用しているのも、ユーザーの心をとらえると同時に、バイオフィリアへの切望と愛情をじわじわとユーザーの心に浸み込ませているからだそうです。
・ストレスホルモンと呼ばれるコルチゾール値の低下
(2004年から数百人の被験者が)森のなかをゆっくりと散策したところ、都会を歩いているときと比べて、ストレスホルモンと呼ばれているコルチゾール値が16%も下がることを発見。交感神経の活動が4%、血圧が1.9%、心拍数も4%下がった。また、気分が良くなり、不安感が軽減したという結果が出た。
・1ヶ月に最低5時間、自然の中で過ごす
フィンランドの研究チームが、都会に暮らす3000人を対象に、自然のなかで過ごしたあとの気分の変化とストレスの軽減について調査した。すると一か月に五時間、自然のなかで過ごすと、最大の効果を得られるという結果が出た。
・フィトンチッドとNK細胞
13人の被験者がホテルの部屋に三泊した実験。
一部の部屋では、日本によく生えているヒノキから抽出したオイルを加湿器にセットし、気化させた。
ほかの部屋では香りはいっさい放出させなかった。
ヒノキの香りが漂う部屋で睡眠をとった被験者は、3日後にNK細胞が20%増大した。そうした被験者は疲労感が軽くなったと報告した。(※ちなみにNK細胞とは、がん細胞やウイルス感染細胞などを見つけ次第、撃退するリンパ球の一種のこと)
いっぽう、香りのない部屋ですごした被験者にはなんら変化は見られなかった。
ヒノキの香りのような、樹木が発散する良い香りのことを「フィトンチッド(芳香性揮発物質)」というそうです。
・ハイキングと創造性
アウトワード・バウンドという冒険教育機関が56人を対象に創造性を測定するテストを実施。
3日間、自然の中をハイキングした後の創造性が50%も向上しました。
・テクノロジー依存症の子どもへの森の効果
韓国でテクノロジー依存症のボーダーラインにいる11歳と12歳の子どもを対象にしたふたつの研究が実施され、子どもを森で2日間すごさせると、コルチゾール値が下がり、自尊心の評価が大きく改善し、その効果が2週間持続することがわかった。
・犯罪発生件数の低下
緑がほとんどない中庭、コンクリートと樹木が混在する中庭、緑が豊かに茂る中庭と、3種類の中庭が揃ってるシカゴの団地で、2年以上の歳月をかけ、犯罪の発生件数を調べた。
すると、緑がほとんどない棟と比べて、緑が混在する棟では犯罪発生件数が42%も低かった。
窓から豊かな緑が見える棟は、緑が見えない棟と比べて窃盗犯罪の件数が48%少なく、暴力がからむ犯罪の件数は56%も少なかった。
・森の幼稚園
ドイツには「森の幼稚園」を意味するヴァルトキンダーガルテンが1000園以上あり、北欧でも人気を博し、その数はいまも増えている。「森の幼稚園」に通う園児たちは、どんな天気であろうと戸外に出て、自然のなかで木の枝などをおもちゃにして遊び、大いに楽しんでいるそうですが、森の幼稚園に通う子どもは、室内ですごす時間が多い園児に比べて病気になりにくく、より多様でより健康な腸内細菌を体内に宿しているとのこと。
ということで、この本を読んで面白かったところをざっとご紹介させていただきましたが、個人的に一番印象に残ったところは、「畏怖の念」について書かれていたところでした。
18世紀の哲学者エドマンド・バークの
「心から畏怖の念を覚えるためには、はてしない広がりが必須で、なおかつ、人間にはそう簡単に理解できないもの」
という言葉を引き合いに出して畏怖の念について説明していました。
「雄大な自然の景色や自然現象が、この世のより深遠な力とわたしたちを結びつけ、助け合いの精神をもたらし、絆を強めることで環境の変化に適応し、進化してきました。」
と著者は説いています。
僕たち現代人に足りていない感情は、この「畏怖の念」だと僕は思いました。
日常的に雄大な自然の景色に触れることはなかなか難しいと思いますが、もっと積極的に自然に触れる機会を作る必要があるのではないでしょうか。
そこで、もっとも身近で今すぐにでも触れられる自然といえば・・・
そう「お日様」ですね。
ということで、個人的にオススメしたいことは、「日の出を拝む」です。
家からは日の出が見られないという方は、高い建物、マンションの屋上、河原、浜辺など、近隣の穴場スポットを探してみましょう。
僕も今年に入って何回か日の出を拝んでいますが、その度に、「自分は生きている!自然に生かされている!」という思いを強烈に抱かされました。
日の出を拝むことは、ぜひオススメしたいですね。
ほかにも、
・あえて緑の多いところをお散歩する
・観葉植物を部屋やデスクなど身の回りに置く
・アロマの香りを嗅ぐ
・家族でキャンプに出かける
・緑豊かな神社やお寺を参拝する
といったことなど、これを機に、自然に触れる機会を少しずつ増やしてみてはいかがでしょうか?
日頃、自然に触れる機会が少ない方、お子さんの教育に悩んでいる方、心身に不調をきたしている方など・・・この本を読むと、今回動画でご紹介したこと以外にも、たくさんのアイディアをもらえ、参考になることが多いと思います。
そして、今すぐにでも自然の中に出かけたくなるはずです。
興味がおありの方は、ぜひ一度、この「NATURE FIX」を読んでみてくださいね。
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