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【書評】歩行禅のすすめ 〜 歩くことで前向きな気持ちになれる!? 〜




今回は「歩行禅のすすめ」という本をご紹介させていただきます。


<著者紹介>

著者は仙台市にある慈眼寺(じげんじ)の住職をされている塩沼亮潤(しおぬまりょうじゅん)氏。

吉野にある金峯山寺(きんぷせんじ)1300年の歴史で2人目となる大峯千日回峰行(おおみねせんにちかいほうぎょう)を1999年に完遂。

この「大峯千日回峰行」とは、奈良県吉野山の山道48㎞を1日16時間かけて歩き、それを1,000日間、足かけ9年にわたり続けるという厳しい修行です。

そのような凄い修行を経験した著者が、その修行をベースにして、誰でも毎日の生活の中に簡単に取り込めるように考案した方法が、本書でご紹介する「歩行禅」というものです。


<このような人にオススメ>

本書は、

・歩行禅に興味がある
・不安やイライラなど、ネガティブ思考になりがち
・人間関係で悩んでいる

といった方にオススメします。

では早速参りましょう!


「歩くこと」はルーティンにしやすい

「日頃の生活で、イライラしたり、ムッとしたり、ネガティブに物事を考えたりしたときに、早くそのことに気がつき、その心の針をプラスに向けるよう自らコントロールする必要がある。」

「心の針をコントロールできる状態は、仏教でいう「悟り」の一つの段階。
そして、日々、習慣的に繰り返す決まりきった仕事や一連の所作、すなわち「ルーティン」が、悟りの境地に近づくために重要な意味を持っている」

と著者は説いています。

「ルーティン」のわかりやすい例として、イチロー選手がバッターボックスに立つ前に、必ず行う同じパターンの繰り返しの動作を挙げています。

そして、僕たちがもっともルーティンにしやすい動作が・・・


そう、「歩くこと!」というわけですね。

歩くという動作は、特別な道具も設備もいらず、もっとも普遍的なものですから、毎日のルーティンにしやすい動作です。

そんな「歩くこと」と「瞑想」を組み合わせたのが、「歩行禅」です。

まずは、その歩行禅の効果についてご紹介します。


歩行禅の効果とは?

2016年にアメリカの精神医学誌「Translational Psychiatry」に発表された研究報告によると、
軽いウォーキングなどの有酸素運動と瞑想を組み合わせると、うつ病の症状が軽減し、前向きな気持ちになることがわかったそうです。

ラトガース大学で行ったその研究では、

→医師によってうつ病と診断された学生のグループと健康な学生のグループが対象で
→30分の有酸素運動(軽めのウォーキングまたはジョギング)と30分の瞑想を組み合わせたプログラム
→週2回を8週間にわたって実施
→その結果、うつ病の学生グループの症状が21%軽減、健康な学生グループでも抑うつ度が低下
→アンケートでも「なにかを心配する時間が減り、人生を肯定的に考えられるようになった」と大半が回答

このコラムでも歩くことの効果は何度もお伝えしてきましたが、新たに瞑想を組み合わせることで、心身によりポジティブな効果が見込めそうですね。

それでは、歩くことと瞑想を組み合わせた歩行禅の具体的な方法をお伝えしたいと思います。


歩行禅の方法とは?

まず姿勢を正し、呼吸を整えたうえで、これからお伝えする3つのステップを踏むことが歩行禅の方法になります。

ステップ1 懺悔の行
→歩きながら「ごめんなさい」を唱える
※これまでの反省や懺悔すべきことを思い浮かべながら歩く
※ごめんなさいが思いつかない時は、右足を出すときに「謙虚」、左足を出すときに「素直」と唱えながら歩くのでもいいです。

ちなみに、僕は「謙虚」「素直」と唱えて歩くこの方法が気に入っています。

注意点
→リズミカルに、やや速足で歩く
→人とおしゃべりしながらはNG
→歩く時間や距離は自由
→毎日続けることが重要


ステップ2 感謝の行
→歩きながら「ありがとう」を唱える
※これまでの感謝の気持ちを頭に思い浮かべながら歩く
※対象は人でもモノでもOK

注意点
→リズミカルに、やや速足で歩く
→人とおしゃべりしながらはNG
→歩く時間や距離は自由
→毎日続けることが重要


ステップ3 坐禅の行
→瞑想して、いまの自分と向き合うのが最後のステップです。

①環境を整える
→実際に試すときは、スマホの電源をオフにしたり、誰にも邪魔されることなく静かにできる環境を整えましょう
②あぐらを組み、手で円を作ります
③姿勢を正す
→目を閉じて、上半身を前後、左右に揺らし、体の軸を定めます

④呼吸を整える
→鼻から吸った息が全身をめぐり、丹田といわれるおへその少し下あたりまで届くようなイメージで、ゆったりと深い呼吸をします

⑤禅定に入る
→坐禅を組みながら、今自分が置かれている状況に思いをめぐらせます
⑥5〜10分ほど坐禅を続けましょう
⑦静かに目を開け、身体をほぐして終了



ステップ1懺悔の行
ステップ2感謝の行
ステップ3坐禅の行

この3つで1セットの歩行禅となります。


<歩行禅の注意点>

この歩行禅をとおしての注意点としては、

→毎日のルーティンとして行うことが肝心
→各ステップを実践する時間帯がバラバラでもOK。(朝の通勤時間にステップ1、帰宅途中にステップ2、就寝前にステップ3、など)
→歩く場所は問いませんが、時には自然を感じられる場所に出向いて行うことがオススメ
→歩きやすい靴、服装。スマホの電源や通知はオフ。

といったことになります。


<感想>

最後に、僕自身の感想ですが、

ありがとう、ごめんなさい、謙虚、素直と唱えながら歩くこと、つまり「思いを言葉にすること」と「歩くというフィジカルな動作」が掛け合わされることで、脳にポジティブな体験として刷り込まれるところが、この歩行禅の良さだと思いました。

そして、ただ単に「歩く」のではなく、自分自身と向き合うために「歩く」、心のエクササイズをするために「歩く」といったように明確な目的を持つことで、より自分自身をコントロールすることができるようになると思いますし、そのための具体的な方法として、本書の内容を知っておくことは、とても役に立つものだと思いました。


「日々、情熱と目標をもって探究していく姿勢、つまり今日より明日、明日より明後日と、よりよい未来に向かっていく人間だけが悟りを得ることができる」という著者の力強いひと言が心に残りました。

よりよい未来を作っていくための第一歩として、ぜひあなたもこの歩行禅を試してみてくださいね。

ということで、今回の話は以上です。



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